ポラリスの物語 (P☆snapshots 169)
夏のおまつりのあと、カイトが この家を去って行った。
ぼくたちは 何も 知らされていなかった。
・・いってらっしゃい。
「ぼく、おるすばんするね・・・。」
レオは、あまり動かなくなった。
寒くなったなぁ・・。
「シュンが作ったの?」
「何年も前、アプリと紹介ビデオをね。
でも、作ったことも忘れてた^^☆」
(『P☆snapshots 132』より)
ぼくが最初に作ったのは『レオの遊園地』だ。本当は、よく覚えている。
もともとは、アニメでレオを動かしてみたかったんだ。
その後、気象情報から 毎日の天気のデータを引っ張って来て、
晴れの日はレオを笑顔に、曇りの日はふつう、雨の日は泣き顔にしたら、
みんなに大受けで、
ふわふわのコンちゃんを’雲’に見立てて、曇りの日に登場させたり、
バブルを(ぼくのイメージでは レオよりもずっと大きかった)
‘空と海’の象徴にして、気まぐれっぽくランダムに登場させたりした。
そのうち、過去のデータをもとに天気を予想する機能を バブルに組み込んで、
ゲームの『シムシティ』みたいに、山や森や花畑や街も、作ってみた。
ベタ塗りの二次元で、ほんの一部が限られた動きをするだけだけれど、
当時は ただ楽しくて、夢中で作っていた。
仲間のテディベアもどんどん増やしていき、遊園地はやがて『星』になった。
でも、事件があって・・。
(『P☆snapshots 146』より)
’母が、大好きなテディベアを作るのをやめなくて良い世界’ に、
避難しなくてはならなくなった。
11歳のときだった。
ITの会社の人や、プログラマーの人から いただいた本の中に
AI技術に関するものが いくつかあったから、
複雑なことは理解できなかったけれど、とにかく急いで、テキスト通りに実装した。
「知能を持ったレオなら、助けてくれるはず」と、強く信じながら願った。
そうして ぼくたちは この世界、
小さい頃からいつも一緒にいた 毛糸のテディベアのレオニード、
‘太陽’のレオが守り育てる星、ポラリスとつながる世界に、
ある朝 目を醒ましたら 移動できていて、
特別な物語が 始まったんだ。
*** *** ***
ぼくの家、ベアたちが呼ぶところの『毛糸の家』から見る 外の世界は、
いつもこんなふうに、薄く もやがかかったように揺らいでいる。
夕方は特にそれが よく分かる。
用心し過ぎて、不十分な知識のまま 必要以上に遮断してきたせいかもしれない。
レオの心の中のことは、レオの問題だから、
ぼくが 踏み込んであれこれ言うべきじゃないと 思うけれど、
「カイトは、ぼくたちを見捨てたわけじゃないと思う」ってことは、
伝えてもいいのかもしれないな・・。
「ぼくは、そう信じている」って。
*『ポラリスの物語』は、こちらです。