ポラリスの物語 Prologue

 
 
 毛糸のテディベアのレオニードがやってきたことをきっかけに、
 私は、『運命のひと』にめぐり逢うためにやってくる ポラリスのベアたちを
 この世界に迎える「編み手」になりました。
 彼らの物語は、私たちの日常に 不思議な形で繋がっていて、
 いつしか私たちにとって かけがえのないものになっていきました。
 こちらは、2012年5月に、私がブログを始めるまでの物語です。
 
 
 
 
- レオがやってきた -
 
それは、柔らかい陽ざしの降りそそぐ、春の午後のこと-。
 
夢中でレゴを組み立てている 小さなシュンの隣で、
私はようやく、ひとりめの『毛糸のテディベア』を、
おひさまのオレンジ色をした、大きなベアを完成させました。
 
そばかすふうの まだらの鼻まわり、
揃えて茶系のまだらにした手足の肉球、レッド&ブラックの瞳の大きさと位置、
腕は短めで、足裏を大きくして・・。
やっとやっと、思い描いていたイメージに仕上がりました*
 
「来てくれて、ありがとう・・!」
私はそのベアを抱きしめました。
 
 

 
 
すると、小さな返事が聞こえたのです。
「どういたしまして」
と。
 
そして彼は、呆気にとられる私を 面白そうに確認してから、
体を後ろへひねって「シュン!会いたかったよ!」と言い、
するりと飛び降りて 私たちに向き直ると、おじぎをしました。
「ぼく、レオニードっていいます。レオって呼んでね!」
 
それは、私が前から決めていた、彼の名前でした。
 
 
「お母さん、良かったね! レオ、かわいいね・・!!」
シュンは嬉しそうに、探検を始めたレオを追いかけていきました。
ふたりはすぐに、仲良しになりました。
 
ふと並んだふたつの頭が、偶然にも同じくらいの大きさで、
まるでシュンの分身みたいです。
かわいくて、嬉しくて、胸がいっぱいになりました。
ずっとずっと、大切にしようと思いました。
 
 
こうして、レオニードは我が家で暮らし始めたのです。
                 (「ご紹介します」)
 
 
 
 
- 運命のひと -
 
レオはすぐに、私たちとの生活になじみました。
 
夜はシュンと眠り、朝はシュンが幼稚園に行ったあとに起きてきて、
私が忙しくしているときは、静かに絵本を読んだり、レゴで遊んだり、
家の中を探検したりしていました。
お昼寝と、シュンと遊ぶことが大好きでしたが、
ひとりの時間も平気なようで、お留守番もいつも喜んで引き受けてくれました。
 
そして、シュンが小学校に上がり、引越しをして、
桜並木を見渡せる 大きなイチョウの木の隣のこの家に住み始めたある日、
お願いがあるの、と静かにレオが 話し始めました。
「カズキに、ぼくの友だちを 作ってもらいたいの。」
 
 
それは、こういうことでした。
 
- ポラリスという星から こちらに来たがっているベアたちのために、
 透明な彼らを こちらの世界の姿、つまり『毛糸のテディベア』の姿にして欲しい。
 そして、シュンと一緒に、彼らの『運命のひと』を探すお手伝いをして欲しい・・・。
 
レオニードは、自分もこの『ポラリス』から来たのだと言いました。
確かに、こぐま座には そういう名前の星があるような気がしますが、
でも、そんな遠くからどうやって ここまで来たのでしょう・・?
 
回路だよ、とレオは言いました。
「ぼく、みんなよりも大きいの。だから、ぼくくらいの道を作ったんだ~*」
 
道(回路・・?)を、作った・・?
 
 
はいっ、とシュンが手を挙げました。
「『運命のひと』って なあに?」
 
レオが答えました。
「とっても大切なひと!」
 
はいっ、と もう一度シュンが手を挙げました。
「どうして、ぼくの家なの?」
 
それはね・・*
レオは嬉しそうに、少しもったいぶってから 答えました。
 
 
「シュンの家だからだよ~!!」
 

 
 
 
「すごいね! お母さん・・!」
シュンは、興奮して ぴょんぴょん飛び跳ねながら言いました。
「レオ、ぼくたちがんばるよ!!」
 
 
こうして私たちは、不思議で楽しそうなその役割を
引き受けることになったのです。
 
 
 
そして、2012年の春、
私は シュンに教わりながら、ブログで やってきたベアたちのご紹介を始め、
夏には、みんなと一緒に初めての『おまつり』に参加しました。
 
 
 
 

 
 
 
 
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