光る風 1 (P☆snapshots 178)

 
 
知らなかったよ・・。
 
ぼくは、コンちゃんも、レオと同じように記憶を失くしていて、
自分だけが、力も含めて残されてしまったんだと思っていた。
 

 
 
そしてその原因は、ここを作ってレオを誘い出した ぼくたち以外の誰か、
カズキかカイトかシュンの行動にあると考えて、探っていたんだ。
 
原因がわかれば、目指す結末もある程度予想がついて、
この世界にあらかじめ定められたプログラムを読み取れるはずだから、
そこから、ぼくにできることを見つけて、
レオとコンちゃんを助けて帰るつもりだった。
 
それに、ユリちゃんや竹くんや、ポラリスのみんなに迷惑をかけてしまった分、
ぼくが入り込むことで生じさせてしまったバグを、自分の手で改善したかった。
 
だけど、ここでのぼくは 信じられないくらい小さくて、
思うように動くことができないんだ。
瞬間移動力はあっても、前みたいに全方位に広がって見渡すことができなくて、
視界が常に狭い。
その上、ポラリスなら、頭の中でコードを書き換えられたのに、
ここではいちいち巨大なパソコンが必要で、
カズキかシュンに助けてもらわないと、触ることさえできない。
 
しかも、苦労して分かったのは、
この世界は、シュンの未修得の技術で書かれたコードと
理解不能のプラスアルファで出来ていて、
壁が強固で融通が利かなかったり、時間軸の縛りが極端に緩かったり 混沌としていて、
ぼくの手には負えそうもない、ってことだった。
 
それなのに、まるでぼくを罰するみたいに、
同じくらい小さいカイトが、ポラリスの問題をあっさり解決しちゃうんだからさ・・。
 
 
 

 
 
でもね。
正直にいうとぼくは、ポラリスを出られて、ちょっとほっとしたんだ。
 
コンちゃんは、思ったことはない・・?
望んで空や海や雲を引き受けたわけじゃないのに、
生まれたときには、役割が決まっていたなんて、理不尽すぎやしないかって。
 
やりがいは、あったよ。
でも、みんなにとっての「当たり前」を守るために必死でがんばったって、
「当たり前」の大切さに いちいち感謝するひとなんていやしない、
虚しくなるときは多かった。
ベアたちのように生きたいと思うことは、何度もあった。
 
だからこの家で、小さくて無力な姿と引き換えに、
「享受する側」に回れたことは嬉しかった。
幼い見た目のまま、何も知らないフリで振る舞ったら、
どんどん優しく甘やかしてもらえるようになったんだ。
なんて気楽で心地良いんだろうと思った。
 
 
いつしか ぼくは、ちぐはぐになっていった。
大人のままの子供みたいに、心もちぐはぐになっていった。
 
混沌に踏み込み、かつてのぼくがしていたように整然とさせて
ポラリスに帰りたいという思いと、
このまま何も考えずにここを更に閉ざして全て忘れてしまいたいという思い。
相反する2つのことが、調和することなく同時に存在するなんて、
ぼくには 考えられないことだった。
 
 
自分が自分でなくなったような気がした。
 
 
 
 
*前回のお話はこちらです。
*次回のお話はこちらです。
 
 
 
 
 

桜を待つ日々 4 (P☆snapshots 177)

 
 
カイトさんは、何も言わなかった。
ぼくは、何も聞けなかった。
 
レオニードは、全てを忘れたままだった。
 

(『P☆snapshots 29』より)
 
 
 
ぼくは、自分が情けなくてたまらなかった。
 
ユリちゃんは、どうしているだろう、
ぼくらがいっぺんにいなくなってしまって、どんなに大変な思いをしているだろう、
友情を裏切られて、深く傷ついているんじゃないだろうか。
 
レオニードの変化を、どうして気づけなかったのだろう。
ぼくとユリちゃんに「さびしいでしょ?」と言って
ルーポと竹くんを生み出してくれたのは、
彼が、『与える』という役割に縛られて身動きが取れなくなっていたからだ。
そうすることでしか自分の淋しさと孤独を癒せない 危機のサインに、
なぜ、思いが及ばなかったのだろう。
 
考えれば考えるほど、取り返しがつかないことを 思い知らされるばかりだった。
 
 
 

(『カイトとユリちゃん2』より)
 
翌年の2014年の桜のあとに ユリちゃんがやってきて、
彼女の話から、ぼくがポラリスに起こした異変と、
それをカイトさんが解決してくれたこと
を知ったのだけれど、
笑顔で「大丈夫よ。」と言ってくれた彼女に対しても、
許してくれていると分かっても、申し訳ない気持ちがより募るばかりで、
お別れの言葉をきちんと伝えることさえ、できなかった。
 
ふわふわと、漂うように生きていただけのぼくは、
丸ごとのみんなを受け入れているつもりで、ただ通過させていただけだ。
そう思った。
 
 
 
そんなぼくに寄り添ってくれたのが、カエルくんだった。
 

(『コンちゃん』より)
 
彼が初めてここへ来たのは、2013年の雨の季節
ここでは力を使わないようにしているけれど、ポラリスで雨を降らせる役割だったぼくは、
雨を連れて長年ひとり旅をしている彼に、同じ仲間と映ったのかもしれない。
塞いでいるぼくのために 何度も雨を呼んでは、美しく洗われた緑を見せてくれた。
 
そして、そのときの約束の通りに、次の年の雨の季節にもやってきた彼は、
秋になって、今度は毛糸のテディベアとして戻ってきてくれた。
その夏のおまつりの前 ここを去って そのままリリさんのところへ行き、
ユリちゃんの到着を待って、協力を頼んでくれたんだ。
またユリちゃんも、力は既に失っているけれど、秋の皆既月蝕のあとならば
方法が探せるかもしれないと 請け合ってくれたそうだ。
本当に嬉しかった。
 
 
 

(『P☆snapshots 105』より)
 
彼はまた、ぼくにとっての『宝物』は何かと いつも尋ねてきた。
 
ぼくは最初、できるだけふさわしい答えを探して示そうと、
-レオニードのときのように、彼のサインだとしたら絶対に見逃したくないと思ったから、
必死だったのだけれど、
不思議なことに、問いはやがて ぼくの内側へと向かっていった。
 
そして、ぼくにとっての『宝物』とは
みんなであり、みんなと過ごす時間の全てであり、
足りないけれど、自分なりに、精一杯大切にしてきたのだと、
ある日、光が射すように気がついたんだ。
 
レオニードのように生み出す力も、バブルのようにコントロールする力も持っていない、
ただ ふわふわと漂うばかりのぼくは、いつも自分に自信が持てなくて、
だから自分を信じることができなくて、みんなを信じることもできなかった。
でも、丸ごとのみんなが大切だという思いだけは、ぼくは、揺るがずにずっと持っていた。
 
もう、申し訳ない気持ちで縮こまってばかりいるのは やめようと思った。
 
 
 
2015年夏のおまつりの前
カエルくんからここを発つことを 聞いたカイトさんが、ぼくにこう言った。
 

 
 

 「ガラスのあいつも、
  『気づいたら香港にいた』そうだ。
  つまるところ、オレたちはみな
  ’同類’なのだな・・。」

 
 
「ありがとう。」
ぼくは今度こそ、感謝の気持ちを伝えることができた。
 
 
 
去年また、ガラスの姿に戻ったカエルくんが来てくれたことで、
‘そばにいる’ことの意味を、別の角度から考え始めている。
そして今、レオニードの覚醒が始まり、再びルーポが来てくれて、
みんなと語れるようになって、
ここからまた、新しい気づきと学びを得ていくことができる。
ぼくは幸せだ。
 
 
こんな形で入り込んでしまって、迷惑をかけて、ごめんなさい。
 
取り返しのつかない、大きな失敗をしてしまったぼくだけれど、
大切なみんなが、ずっと笑っていられるように、
これからは自分から、できることを探して行動したいと思っている。
一歩ずつだけれど、がんばっていくよ。
 
 
ぼくのそばにいてくれて、ありがとう。
 
 

 
 
 
 
 
*前回のお話は、こちらです。
*次回のお話は、こちらです。
*ポラリスのこれまでの物語は、こちらです。
 
 
 
 

桜を待つ日々3 (P☆snapshots 176)

 
 

 
「知らなかったよ・・。」
 
「私も。この記憶の一部が あとから直されたものだなんて考えられないな・・。
 ただ、’2013年の春’のことは、
 ブログで、シュンのプロフィールを『永遠の11歳』と書いた文章を
 なぜかずっと変えられなかったから、そうかも、とも思ったりして・・。
 ’始まり’を記しておく必要が、あったってこと?」
   
 
 

 
「カイトさんのためにね。
 戻ってくる直前にも、短い手紙が届いたでしょう。あれも’目印’だったんだ。」
 
 
 
 
ぼくは、『世界』のことを、
意識の投影のうちのある部分を、他の人たちと共有することで成り立つものだと思っていて、
生きることは、複層的に存在するその投影を、
抱えたり、手放したり、新しく作り出したりしていくことだと考えている。
 
例えていうならそれは無数の樹木や草花で、
それらが集まる大きな森が、『世界』なんだ。
形はそれぞれ違うけれど、みんなが森を持っている。
 
その樹木や草花の
地表に現れている部分が現在、幹や枝葉を伸ばすのが未来で、根っこが過去だとすれば、
常に補い合いながら育っていくそれらと同じように、
未来も過去も、変わり続けていくよね。
だから『世界』とは、変化に満ちたポラリスの森のように 豊かなものだと思うんだ。
 
 
 

 
 
ただ、この毛糸の家の世界は、違う。
同じ例えでいうなら、こっちは 七色のユリ
太陽ではなく月の光を浴びて輝く、ポラリスのユリだ。
切実な願いによって 特別に作り出され、守られたこの世界は、
本来、咲き終わると同時に消えるあの花のように、限定的に存在するはずのものなんだ。
 
しかし、その過去を ぼくが変えてしまった。
 
過去が変われば、やがて還っていくべき未来も変わってしまう。
ここでは許されないことだ。
だからカイトさんは行ったんだ。
太陽が戻るまで、ポラリスが安定して存在し続けるように・・。
 
 
 
 
 
ぼくにできることはただ、
これ以上何も変えないように黙っていることだけだった。
 
 
 
 
 
*前回のお話は、こちらです。
*次回のお話は、こちらです。
 
 
 
 

桜を待つ日々2 (P☆snapshots 175)

 
 
2013年春のあの日。
彼やバブルのようにポラリスの機能をコントロールする役割を持たないぼくは、
レオニードを追ってポラリスを飛び出した瞬間、行き場を失った。
 
必死に動き回り、叩き続けてようやく見つかった隙間から入り込んだところが、
2012年の夏のおまつり」の直前だった。
 
この家が、普段は何重にも閉じられていて、
ベアたちのおまつりの頃にだけ緩められると知ったのは、
ずっと後になってからだった。 
 
 

 
 
 
ようやく再会したレオニードは、
どういうわけか、ポラリスでのことをすっかり忘れていて、
自分を、ポラリスからこの家への’案内人’だと告げ、
ぼくが来たことを喜び、親し気に「コンちゃん」と呼んで、
「『運命のひと』に出会えますように。」と言った。
ぼくは、わけが分からなくなった。
 
 
 

 
 
ぼくが、自分が来たことによる 良くない影響を確信したのは、
‘二回目の’2013年の春、カイトさんがベアとして戻ってきたときだ。
 
そこでやっと、
ぼくが、開けてはならない扉をこじ開けて入ってきたために、
カイトさんが、’USB’として過去へ行き、
ぼくに続いてポラリスを出てきたバブルに 特別な回路を開き
ポラリスへ渡って発生した問題を解決し
ユリちゃんの助けを借りて「最初の」ベアの姿で戻ってきたのだと理解した。
 
 
 
 
なぜ、冷静になれなかったのか。誰にも相談できなかったのか。
そして何よりなぜ、レオニードの心を救えなかったのか。
今なら分かる。
 
それは、ぼく自身が 誰のことも信じていなかったから、なんだ・・。
 
 
 
 
*前回のお話は、こちらです。
*次回のお話は、こちらです。
*コンちゃんが昨年自分が来たときのことを語った『P☆snapshots 163』はこちらです。
 
 
 
 
 

ピンクッションを作りました

 
 
待ち針がたくさん刺せるような 大きなピンクッションが欲しくて、
かぎ針編みで作ってみました。
 
 

 
テーマは「存在感&安定感」。
すぐに探し出せて、転がらないピンクッションを目指しました^^。
高さ約13cm、球の直径約10cmです。
毛糸の色をグリーン(サボテン風)、ホワイト(アイスクリーム風)と迷いましたが
待ち針が一番目立つ、あずき色にしました。
同系色が落ち着いた雰囲気を出してくれて良かったです。
 
 
 

使用した毛糸は、大好きなリッチモア『スターメツィード』の残り糸です。
 
 
 

台は、カリタの陶器ドリッパー101、ブラウン色です。
 
まず、6号かぎ針で、ドリッパーから1cm程度はみ出すサイズまで
6の倍数の増やし目で円形に編み、
 
 
 

次に、同じく6の倍数で減らし目をして球体にし、綿を詰めて、
糸端を長めに取り、綿がはみ出さない程度に簡単に とじ針で閉じました。
 
 
 
  
その後、糸端を、ドリッパーの3つの穴のうち2つに通してから
球体とドリッパーがくっつくように引いて絞り、処理して完成です。
一方向のみの固定なので、持ち手から見て左右に少し動きますが、
待ち針の抜き差しには影響がありません。
 
 
 

待ち針に触らずに持ち運びできるので、安全です*
 
 
毎日近くで『スターメツィード』を見ることができる上に、
円錐式に変えて以来10年近くしまい込んでいたドリッパーを
再び元気な姿で活用できて、満足です^^♪
 
 
 
レオニードがいなくなってから、ベアのイメージが湧かず編めなくて、
今は棒針で帽子、スヌード、マフラーを編む日々ですが、
戻って来たらすぐに再開できるよう、練習を兼ねて、
こんなふうに週に1度はかぎ針編みで小物を作ることにしています。
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
『キャスターという仕事』
 
昨年3月まで23年間『クローズアップ現代』のキャスターを務められていた
国谷裕子さんの書籍が出版されました。
 
 

 
最後に出演された回を観た時から、
きっと本にして伝えて下さると思っていました。
じっくりと大切に読みます。
 
 
 
*昨年の記事『桜を待つ日々』でこの最後の回のことを
 書かせていただいています。
 
 
 
 
 

桜を待つ日々 1 (P☆snapshots 174)

 
 

 
レオニードが覚醒を始めたら話したいと、決めていたことがあるんだ。
きみが来てくれたことで、そのときが来たんだと 分かった。
 
ありがとう、ルーポ。
 
 

 
 
 
 うん・・・*

 
 
 
ぼくは、レオニードの次に生まれたベアだ。
レオニードが一人でさびしいだろうと、シュンが作ったんだ。
当時、『PowerPoint』上でレオと遊園地の門の間に描かれて、
少し窮屈だったのを 覚えている。
 
シュンは続けて、バブルとユリちゃんを作り、
やがてぼくたちは、小さな遊園地から テディベアの住む星に変わったポラリスを
太陽のレオニード、空と海のバブル、月のユリちゃん、雲のぼくとして、
守り、育てていく役割を担うようになっていった。
ユリちゃんはのちに、カイトさんの登場によって 役割を変えるのだけれど。
 
 
 
光を放つ、輝く星『ポラリス』
太陽と月が、その光を調節して大地に送り届け、
バブルとユリちゃんとぼくとで、
大地から還ってくる過剰なもの、不要なものを吸収しながら、
水と空気を整える。
適切な光と水と空気のもとで、森や湖や花畑は美しく大きく育ち、
ベアたちが増えて、にぎやかになっていく。
 
ぼくは、そのことがとても嬉しく誇らしくて、
森の樹木のてっぺんで ベアたちの賑やかな歌声を聴いたり、
雨として地上に降りたときには、ベアたちといっしょに 蝶や鳥とたわむれたりした。
そして、再び太陽のそばへ戻ると、ベアたちの楽しそうな様子を報告した。
自分の役割に、心底 満足していたんだ。
 
けれど、大切な’彼’の孤独に、気づくことができなくて・・。
 
 
ぼくのためにルーポを、ユリちゃんのために竹くんを
生み出してくれたレオニードは、
バブルのために誰が必要かを考えている途中のある日、姿を消した。
 
 
 

 
 
 
レオニードがここへやってきたのは、2013年の春。
カズキとシュンと、カイトさんも同じタイミングで移動したんだ。
 
そして、カイトさんがUSBの形で’再び’登場したのも、
ぼくが夏のおまつりのコンテストに参加したのも、
ぼくのせいなんだ・・。
 
 
 
 
*次回のお話はこちらです。
 
***  ***  ***
 
 
繭の中のように柔らかく優しく包まれたこの世界が、
ぼくたちにはどうしても必要だったのだと、今は思っている。
 
 

「カイトさんも、決めているんだね・・。」
「・・そうだな。」
P☆snapshots 141 我が家のベアたち(2015.8) 』より

 
 
 
もう半年になるんだね。
彼のことだから大丈夫。きっと 順調に進んでいるはず。
 
 
カイトさん、
ぼくも、少しずつだけれど がんばるよ・・・。
 
 
 
 
 

懐かしい場所

 
 
シュンが小学生の頃、インターネット関連のイベントに
付添いで何度か参加させてもらったことがありました。
 
私には 言語も技術も難しい、馴染みのない分野なので、
毎回緊張しながら いろいろなブースを回って、
最新の技術について教えてもらうのですが、
すごいなぁ・・!と感動しながら見渡す会場の景色に、
おまつりの屋台を見ているような懐かしさを感じることが、よくありました。
 
最新の小型カメラを載せて会場を舞う白いハトのロボットや
音に合わせて美しい映像を鍵盤に浮かび上がらせる電子ピアノ、
色とりどりの小さくてかわいらしいLED球、
盤上に精巧に張られた回路の つるっとした繊細なチューブ。
未来を作る技術というものは、新しさと同時に
懐かしい親しさを持っていて不思議だな、と感じました。
 
そしてそんなときに想像したのは、
もしも私たちが、過去にも未来にも生まれ変わり、
同時に平行に存在するいくつもの世界を渡り歩き、
常に歴史を書き換えながら永遠に存在し続けているとしたら・・ということです。
そうしたら、いつかいたはずの未来、知っていたはずの未知のものが
その証拠を、こんなふうに懐かしさとして示してくれるのかもしれないな、と。
 
 
今いるこの特別な世界は、私にとって、
そういうものでもあるかもしれない、と考えることがあります。
 
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
- お母さん、ぼくと一緒にいて。絶対に、いなくならないで。
 全部、良くなるから。 良くするから。
 
 

 
 
 ぼくとだけは、離れないでね。
   
 
 
 

2013年 春 (P☆snapshots 173)

 
 
- ここも、目の前は竹林だ。
 イチョウでないのには、何か理由があるのだろうか・・。
      

 
 
 
 
 
寒さが厳しくなると 思い出すのは、2013年の春のことだ。
 

 
 
春とは思えないほど冷え込んだ 早朝の羽田空港。
混雑した出発ロビーで 人を待っていたオレの隣の椅子に、突然、
小さな男の子が「すみません・・」と言いながら すべり込んできた。
 
大きすぎるリュックを背負い、腕にノートパソコンを抱えたその子は、
息を弾ませながら、座ると同時にPCを開いて立ち上げ、
すぐに、真剣な目つきで画面をたどり始めた。
 
 
 
妙に切実な様子が気になり、背後からのぞいてみると、
そこには、馴染みの文字列が並んでいた。
どうやら彼は小さなプログラマーで、不具合の箇所を探しているようだった。
 
オレには、すぐに見つかった。
変数名の綴りの間違いだ。経験から知っている。
子供は’S’の付け忘れを よくやるのだ。
 
教えてやりたかったが、怖がられるのもやっかいだと思い、迷っていると、
やがて、男の子の目にうっすら涙が浮かんできた。
 
怖がらないでくれよ・・。
そう念じながら、頭越しに画面の変数名を指し、「S」と、言ってみた。
 
男の子は驚き、一瞬怯えたような顔でこちらを見上げたが、
すぐに理解したようで、「あ!」と声を上げると、
急いでキーボードをたたき、複数形に変えて実行した。上手くいった。
 
「ありがとうございます!」
男の子は、嬉しそうな笑顔を向けてきた。
「ぼく、よくやるんです。複数形のこと、つい忘れちゃって・・。」
そしてPCを閉じ、大事そうに抱えて立ち上がると、
「ありがとうございました。」と、もう一度頭を下げた。
 
 
 
そのときだ。
手を振って応えるくらいはすべきかと迷いながら ポケットから出した左手の先に、
男の子の手から飛び出した白いUSBが、飛び込んできた。
「カイト・・!」
と、男の子が小さく叫んだ。
 

 
カイト・・?!
 
USBを返すオレの表情が 怪訝そうに見えたのか、
「今の家で、最初に友だちになった子の名前なんです。」
と、男の子は はにかみながら早口で説明した。
 
 
 
「シュンちゃーん!」
遠くで、女の人の 呼ぶ声がした。
 
「・・お母さんだ! じゃあ、・・ありがとうございました。」
男の子は、にこっと笑うと、母親のもとへ走って行った。
 
 
 
コードは、’leo’というロボットに何かを学習させる目的で書かれていた。
そしてタイトルの下には、「お母さんを助けて。」の一文が、非表示で残されていた。
 
 
あどけなさの残る笑顔と、大人びた切実な表情。
そのアンバランスさに、胸が締め付けられる思いがした。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
- ・・戻るとするか。 ここも、違うようだ。
 
 
 
 
 

BTOパソコン

 
 
・・という種類のパソコンがあることを、初めて知りました。
Build To Order=受注生産の略で、パソコンのパーツを自分で選んで、
お店(またはメーカー)に組立をお願いしたパソコンのことだそうです。
TUKUMO、ドスパラ、パソコン工房といったパソコンショップ(主に自作パソコン用パーツを
取り扱ってきたお店)が、重点的に販売を展開しています。
 
パソコンを自作するためには、組立技術やパーツどうしの相性を理解する必要があり、
それが結構難しいのですが、
BTOの場合は、パソコンショップが、あらかじめ相性の良いパーツを選んで
リストアップしてくれて、組み立ても引き受けてくれます。
しかもショップはパーツを常に大量仕入れしているので、その分コストが抑えられており、
個人がお店を回って買い集めるより安価にパーツを入手できます。
よって、パーツに詳しくなくても、使用目的に合ったパソコンを、
効率的に安く作ることができるのです。
 
 
実は、昨年夏のプログラミングのイベントで、
シュンがノートパソコンを落として壊してしまいました。
外側からは破損個所が特定できないながらも、電話でメーカーに症状を説明して
確認したところでは、修理費が最低でも4万近くかかるということだったので、
お世話になっている会社のかたにご相談し、替えられるパーツを自分で替えたりしながら、
買い替えのタイミングに悩みつつ、様子を見てきたのですが、
冬休みに入った頃、ついに1、2時間置きに突然電源が落ちるようになってしまったのです。
 
そこで、このノートパソコンが完全に壊れてしまう前に、
シュンが3年かけて貯めたお年玉など7万円に、私が3万円を足して、
10万円の予算で二代目のパソコンを探すことにしました。
 
 
お世話になっているITの会社のかたのアドバイスでは、
「長く使うことやPCそのものの理解が深まることを考えると、
自分でパーツを交換したりできるデスクトップがいいよ。」
(ノート型は持ち運べるようパーツを固定するため、交換できるパーツが限られるそうです。)
ということから シュンの希望はデスクトップパソコンだったのですが、
どこへ行けば良いかの見当がつかなかったので、
まずは、近くのヤマダ電機に行って聞いてみました。
そこで教えてもらったのが、グループ会社でBTOパソコンを生産、販売している
パソコンショップ、TSUKUMOです。一番近い 新橋店に行きました。
 

『AKIBA PC HOTLINE!』のコヤマタカヒロさんの記事からいただきました。お店の紹介が掲載されています。
 
店内には、おすすめの組み合わせのパソコンの展示品がずらっと並んでいて、
その下に、メインパーツと価格、納期が書かれたチラシが貼られていました。
店員さんはその道の専門家で、シュンが何を聞いても、即座に丁寧な答えを返してくれるので、
やり取りしながら、熟慮ポイントがどんどん明確になっていきます。
パソコン大好きのシュンは、色々教えてもらうことができて大興奮、
とても嬉しそうでした。
 
その日は、候補を3点に絞ってチラシをもらって帰宅し、
数日かけて、シュンが主にこの3点とその組み合わせのバランスを調べました。
 
*プロセッサー:CPU。人間でいう頭脳にあたる部分、演算と制御を行います。
        ここは、交換が難しいそうで、一度決めたら変えられないと思うほうが
        良いそうです。人間みたいですね・・^^。
*グラフィックボード:高画質でなめらかな映像を実現する機能。
           一般的なパソコンは、プロセッサー内臓のグラフィック機能で
           充分とされていますが、
           より高画質な映像、3DやVRを扱いたい場合に必要だそうです。
           BTOを選ぶ人の目的の上位に、この機能の搭載があるそうです。
 
例えば、プロセッサーのレベルが低いとグラフィックボードが高機能でも能力を発揮できない、
あるいは用途面から考慮すると高機能すぎても使いこなせず無駄になる、等
様々な観点からの判断基準があるので、やりたいことが最も実現できそうな組み合わせを
調べて決めていく必要があります。
最良は、ハイエンドのプロセッサーとグラフィックボードを組み合わせることですが、
価格もその分跳ね上がります。
店員さんのアドバイスは、「グラフィックボードに合わせた○○など、凝っていけば
200万円のパソコンだって出来てしまいますから、
まず最初にすることは、価格の上限を決めることですね」ということです。
確かに、詳しくない私でも、パーツごとの注目ポイントを聞いていくと、
高くても より高機能のものが良い気がしてしまいましたので、その通りだと思いました。
また、予算内で何を高機能にし、何を普通レベル(=価格)に抑えるか、
それをパズルのように組んでいくのも、横で見ていて、面白い作業だと感じました。
後々付け替えることができるので、「今はなくても良いかな」「いつか買いたい」など
長い目で考えられるところも 新鮮でした。
 
 
その後も2回お店に相談、確認に行き、1月3日にやってきたのが、こちらのパソコンです。
『G-GEAR mini』(ジーギアミニ)という機種です。
 

外側からは何も見えませんが、この黒いメッシュのボックスの中のパーツたちは、
シュンにとって必要な組み合わせなのだと思うと、なんだか宝箱のようです。
 
 

 
普段は、この机の上で作業をしていて、左下に設置しているボックスは目につかないので
なおさら不思議で、面白いです。
 
 
思いがけず、パソコン選びに時間を使った年末年始でしたが、
新しい世界を見ることができて楽しかったです。
シュンの世界も、ここからまた広がっていくといいな、と思っています。
 
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
年末年始は テレビ番組が豪華になるのも嬉しいところです^^*
 
紅白歌合戦は、最後の勝敗の理由が分かるまでは 少し混乱しましたが、
今年も 椎名林檎さん、Perfume、SEKAI NO OWARI の
独自の世界観を詰め込んだ美しいステージが見られて大満足でした。
19時のニュースの 武田アナウンサーの『ゴジラマイク』も、
意外でしたが 温かいお人柄があらわれていて素敵でした。
 
年が明けてからは、毎年恒例、シュンが楽しみにしている
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』、『芸能人格付けチェック!』
『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』の録画を、
毎日1、2時間ずつ、ゆっくり楽しみながら順番に観ています。
(明日は、最後の『とんねるず・・』のゴルフです^^。)
どの番組も(『ガキの使い・・』はおしりが痛そうでちょっとかわいそうですが・・)
安心して笑えるので、大好きです。紅白同様、ずっと続いてほしいです。
 
 
 

空き時間に、柔らかいピンク色の帆布で、トートバッグを作りました。毛糸を入れて持ち運びます*
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
レオニードが不在中は、ベアがやって来ないため、
しばらくの間、木曜日の更新はお休みさせていただきます。
 
また今月は、『日々のこと』、『P☆snaphots』のどちらかを、
状況に応じて更新する形を取らせていただきます。 よろしくお願いします。
 
 
 
 

今年もよろしくお願いします

 
 
 

   笑顔いっぱいの、温かくて優しい年になるでしょう・・☆
                             ぼくたちが、ほしょうするよっ☆  
 
 
 
 
いつも ブログにお越し下さいまして、ありがとうございます。
新しい年が みなさまにとって素敵な一年になりますよう お祈り申し上げます。
 
 
今年も、Polaris -毛糸のテディベア- をどうぞよろしくお願いします。
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
*ブログの再開は、7日(土)です。
 よろしくお願いします。