『みんなのパンツ』より

 
 
先日こちらでご紹介したシュンのバミューダパンツ。
型紙のおかげで、ウエアをミシンで縫ったのは高校以来、という頼りない腕前ながら^^;☆
ゴムパンツとは思えないほど すっきりシルエットに仕上がってくれました。
 
夏は基本的に、Tシャツ&ハーフパンツ&サンダルにリュック、というシュンは、
お腹のゴム部分を隠すことができるため、外出時にも着られます。嬉しいです^^。
 

 
 
 
  本人も最初は、
  「ええーっ、ゴムで外出用??」と
  拒否しましたが、
  履いたらゴム部分が見えないので、
  大人サイズの市販のもののウエストを
  ベルトで締めるのは面倒だし、もったりするけれど
  こちらは、軽くてラクだと言って、
  履くようになりました^^。

 
そこで本日は、同じ型紙で、生地を変えて作った3点をご紹介します。
 
 
テキストは月居良子さんの『みんなのパンツ』。
(出版社に詳しい書籍紹介があります。こちらです。)
月居(つきおり)という苗字も素敵です・・*
本によると、アパレル会社勤務を経てフリーのデザイナーになられたかたなのですね。
 

 
ミシンでウエアを作るのは高校以来で、自信がなかったので、
パンツ作り専門の本を図書館で探しましたが、
最初に借りたこの本が運命の出会いとは、本当にありがたいです・・☆
 
 
 
 
*使用素材*
 
夏場のボトムスですので、軽い、ベタつかない、丈夫、シワにならない、ことが重要です。
そこで、『ポリエステルと綿の混紡素材の織物』にすることにしました。
生地が1枚で、裏地なしで直接素肌に触れるので、綿100%や綿麻混では
着心地は良いですが、シワだらけになり、回復しにくいのです。
 
ポリエステルは反発性があるためシワになりにくく、丈夫な素材です。
ただ、一般的なポリエステル糸では、生地にすると つるっとした表面感になりますし、
吸湿、吸水性能がほとんどないため、蒸し暑いところが難点です。
また綿は、高い吸水性能による着心地の良さと、天然繊維独特の表面感が良いところですが、
前述のシワと、強度がやや劣る問題があります。
その点で、『ポリエステルと綿の混紡素材』は、そのポリエステルの特徴と、綿の特徴を
同居させた生地ですので、使いやすいのです。
例えば、「シワは、多少は入るけれども、気になるほどではない」という具合です。
異素材どうしの混紡は本来品質安定が難しいのですが、生産技術の進歩によって
品質も質感も向上し、現在では、ワイシャツ等幅広い分野で使われるようになりました。
 
ただ、ポリエステルと綿は染まり方が違うので、色によってはムラが出ます。
また染色技術も生産会社ごとにノウハウが異なる(企業秘密のところも多いです)ので、
お店によって質感が全然違う、ということも起こります。
PC画面では判断が難しいので、特に濃色などは先にサンプルを取り寄せると失敗が防げます。
 

こちらは、ノムラテーラーさんに色指定をしてお願いしたら送ってくださった、「T/Cツイル」のサンプルです。
E(エステル=ポリエステルの略称)/C表記なので、海外産ポリエステルを使用した生地かもしれません。
私は、次は3番目のモスがいいなぁ、と思っています。
 
 
 
使用したのは以下の3生地です。混率は同じ ポリエステル65%・綿35%です。
 
 1.T/Cブロード(グリーン):右下
 2.T/Cツイル(グレー):左
 3.T/Cデニム(ブラック):右
 

 
T/Cと表記するのは、「テトロン」とコットンの混紡という意味です。
「テトロン」は、ポリエステルを 帝人(株)と東レ(株)が販売する際の商標なのですが、
今から50年以上前に、2社が共同でポリエステル糸生産を国内に導入したとき、両社の頭文字を
取って名付け、それが長らく国内流通の多くを占めてきたという経緯から、国内の繊維業界では、
海外を含めた他メーカーのポリエステルも多く流通するようになった現在も、
ポリエステルのことを、商慣習的に「テトロン」と呼ぶことがあるのです。
T/C、E/C、P/Cはみな、ポリエステルと綿の混紡を指します。
 
 
 
*完成品*
 
「ウエストって上下のどっちだっけ・・?」
「生地に対して、どんな角度で置くのかなぁ。」
「無駄の少ない型紙の置き方って・・(と考え込み、2枚一度に裁断できず・・^^;)」
などなど、立ち止まることが多くて、最初は4時間以上かかりましたが、
2着目からは、型紙が出来ていることもあり、空き時間を見つけてちょこちょこ作業する感じで
月居さんがおっしゃる通り、2時間強あれば できるようになりました。
 
Lサイズ(&11号)なので、私も家では借りて履いています^^。
以下は、着用の感想です。
 
 
1.T/Cブロード(グリーン):製品重量 92g(軽いです!)

 
 
 
  生地が薄いため、
  すそだけが三つ折りの場合、
  その重さに引っ張られて
  広がり気味になります。
  

 
いちばん薄いブロード地なので、最初は頼りない感じもあり、強度を心配しましたが、
蒸し暑い日は着心地がとても良く、意外と洗濯してもダレませんでした。
 
 
 
2.T/Cツイル(グレー):製品重量 147g

 
 
 
  横方向にハリが出る生地のため、
  シルエットが本のイメージに近く
  仕上がりました。

 
ぱっと見た感じでは、グレーという色味もあり、ウールに似た表面感です。
例えれば、男の子が卒業式等に着る半ズボンのようです。
ワイルドな色味のほうがカジュアル感が出せそうなので、
次回は上のサンプルのモスにします。
 
 
 
3.T/Cデニム(ブラック):製品重量 165g(片ポケットあり)
    
やや とろみと落ち感があり、3つの中ではいちばん シワが残りやすいですが
ほどよい広がりのシルエットが私はいちばん好きです。
右側のTシャツは、SEKAI NO OWARI の深瀬さんのお顔のTシャツです*
 
綿デニムに比べると薄手で軽い生地で、見た目はデニムなのですが、離れて見ると、
やや光沢感が出ます。ポリエステルの性質だと思われます。
ですので、こちらは4色展開(ブルー、ネイビー、濃ネイビー、ブラック)なのですが、
男の子には、このブラックか濃ネイビーで締めるほうが合いそうだと感じました。
 
 
 
4.追記:ポケット問題
 
シュンが、「ポケットがないと、ハンカチが入れられないんだよなぁ~。」というので、
一番簡単そうで、シルエットも崩れなさそうな後ろポケットを、
(2つは面倒なので右側だけ^^;)、3着目の「T/Cデニム」のときに作ってみました。
 

 
大は小を兼ねると思って、いちばん大きいポケットを選びましたが・・大きすぎました。
次回は、ひと回り小さくします。
 
 
 
*生地コストのこと*
 
おしまいに、家族で使う場合は、コストもとても重要なので、そちらも振り返ってみました。
 
生地は、T/Cを省略して、ブロードとツイルをノムラテーラーさんで、
デニムをファブリックハウスイセキさんで、Lサイズ向けに
110または112cm幅のものを140cm購入しました。
(ネットショップは200cm程度までメール便可のところが多く、送料が抑えられます^^!)
 
1着分あたりの生地価格(糸、ゴム代除く)
生地幅を110cmとすると(広幅はなかなか売っていないです)、
140cmあたりの生地価格(税込み)は、
ブロードが602円、ツイルが980円、デニムが1176円です。
つまり、ここから1着分を裁断する場合は、1着がこの価格で出来ることになります。
(私は、つめつめで140cmで取りましたが、安全のためには150cmをお勧めします。)
 
コスト対策(3着作ります)
型紙を、上下ひっくり返したりしてなんとか入れ込むと、110幅×140cm長の中に
1.5着分(表3枚&裏3枚&ポケット1枚)を取ることが可能です。
ですので、倍の280cmを購入して(140cmずつ、メール便2回にするほうがお得です)
Lサイズを3着作れば、1着はポケットがつきませんが、
一番高いデニム生地の計算式で、なんとこんなに低くできます。
 
 1176円(140cm長)×2(2倍の生地長)÷3(着分)=784円(1着)
 
強いていいますと難点は、3着全部が同じ生地の同じ色になってしまいますので、
着用する人とご相談されるほうが良いかもしれません^^。
ただ私は、自分用はパジャマパンツにするとすれば、例えば、同じツイルのグレーとモスのミックスに
してもいいかな(ピエロふうに^^☆)、などと考えたりしています。
 
また、私のケチケチ&つめつめの型紙取りは、ちょっとご説明が難しいので、
まずは、150cmを購入して、1.5着分取りOKを確認された上での、次のご購入をお勧めします。
 
『みんなのパンツ』は、サイズ展開が110cmの子供から、大人の15号、XLサイズまであり、
その全部の型紙が掲載されているので、ご家族の構成によっては、もっとコストを抑えられるかも
しれません。その点でも、とっても親切だと思います。
 
 
 
ご報告は以上です。
 
続けて3枚も作ったのは 初めての経験でしたが、
同じ混率のT/C生地でも、それぞれシルエットの出方や着心地に
違いがあることが分かり、とっても面白かったです。
凝ったパンツは まだまだ敷居が高いですが、このバミューダパンツを作り続けていくうちに
本に掲載されている「一見ロングギャザースカートのようなパンツ」なども作れる技術が
身に付いてくれたら嬉しいなぁ、と思っています。
 
ゴムパンツは、簡単で実用的なところがいいですね!
これからも、冬パジャマ用のネル地の長いパンツなど、色々とトライしてみたいです*
 
 
 
 
 
 
<<使用した生地につきまして>>
 
アフィリエイトをしない方針のため、
商品の直接の販売ページしかご紹介方法がない 今回の生地のような場合は、
リンクを控えさせていただいています。
品番など詳しい情報をお知りになりたいかたは、パソコンでは右下のメールフォームから、
モバイルではプロフィールに記載のアドレス宛に、お気軽にお問合せ下さい^^*
 
 
 
 
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先日の イチロー選手のウエア生地とともに強く心に残っている、
会社員時代の、数少ない(素材メーカーは地味なのです^^)華やかな思い出に、
コムデギャルソンの渡辺淳弥さんが、パリコレ向けの素材探しのために
福井県の丸編みや経(たて)編みの生産会社を回られた際、先輩のお手伝いで
同席させてもらったこと、があります。
雨の中でも、傘なしで楽しめるような超撥水の素材を探されていて、
スポーツ衣料生地を扱う 私のいた部署へ、依頼が来たのです。
 
   
パリコレ 2000 S/S JUNYA WATANABE COMME des GARCONSより
コムデギャルソン店舗マップさんからお借りしました。ありがとうございます。)
 
渡辺さんは、仕事では下の立場の私たちに対しても、常に丁寧に接して下さる、
穏やかで優しい雰囲気の、でも、きっぱりと指示や主張をされるかたでした。
落ち着いた色のチェックのシャツにデニムを合わせた、清潔で静かな服装をされていました。
大量の生地サンプルを、指先で転がしたり浮かしたりと、何度も繰り返し触れて確認していらして、
その手が、中性的というか精密機械的な感じがして興味深くて、
一流のデザイナーさんの手なんだ・・!と、何度も見入ってしまったことを覚えています。
 
びっくりしたのは、依頼される試作の数の膨大さです。
試作品は量産品に比べて、コストがかかるため価格が高いのですが、
質感や触感等仕上がりのわずかな差にもこだわりを持たれていて、理想のシルエットを実現するために、
同じ組織でも糸の細さや種類を変え、染色、撥水等の加工も変えて、繰り返し試作を依頼されました。
生産会社の技術者の人たちは、あまりの厳しく細かい注文に驚き、大変だぁ、と言いながらも、
「これが超一流のものづくりだね。ものすごく勉強になるよ!」と興奮されていました。
 
 
今回初めて、比較のために続けて3枚、同じパンツを作ってみて、
そのシルエットの違いから、当時のことを思い出しました。
渡辺さんは、例えばその落ち感1つについても、各パーツが影響し合って現れてくる姿の全体を
常に確認しながら、緻密な試作を繰り返されていたのだと、素敵だったなぁ、と
改めて思いました。
 
 
 
 
 
 

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