コンちゃん (P☆snapshots 163)

 
 
空が変わった。
そろそろまた、雨の季節がやってくるんだね・・。
 

 
 
 
 
ポラリスのベアたちは、
『運命のひと』に逢いたくて、この家にやってくる。
ユリちゃんも、そうだった。
 

 
みんな、戻れないと分かっている。’力’も失われる。
それでも、自分で決めて、自分の意志でやってくるんだ。
 
 
 
 
もう、どれくらい前のことになるだろう・・・。
 
あのとき、漂う雲のように生きていたぼくは 突然の ’彼’の不在に混乱して・・
気づいたら、この家に来ていた。
 

 
ぼくを作った女性は、「カズキです。」と名乗り、
「懐かしいお顔をしているのね。」と、不思議そうに笑った。
 
 
昼下がりのリビングは、ひっそりとしていた。
「そういう時間帯なの。」と、ぼくの左右の耳を確認しながら 彼女は言い、
もうすぐ『管理人』が帰ってきて’お昼寝タイム’が終わる、
そうしたら賑やかになる、 のだと言った。
 

 
 
 
『管理人』は、丸い顔をした小さな男の子で、
一緒に帰ってきた 友だちらしい女の子から、「シュンくん」と呼ばれていた。
ぼくを見つけると、駆け寄ってきて抱きしめ、
「コンちゃんだ-!」と、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。
 
カズキの言う通りだった。
おひさまが戻ってきたみたいに、賑やかになった。
 
 
 
そして、旅立つことができないぼくは、
『おまつり』を確かめたくて、頼んで、
カズキの一度きりの、コンテストに出るベアにしてもらったのだった。
 

 
 
 
 
それからは、さまざまなことが起こった。
 
カイトさんが去って行きバブルがやってきて
その次の春には、カイトさんが違う姿で戻ってきて・・・。
そう。 ガラスのカエルくんも来てくれた。
 
 
 
ぼくの孤独に寄り添ってくれた、カエルくん。

 
彼が去っていったことは、淋しいけれど、それで良かったと思っている。
ひとは本来、自分のために生きるべきで、
ぼくのために ぼくのそばにいることが、長く続いてはいけないと感じていたから。
 
 
 
 

 
・・でも、本当に嬉しかったな。
雨の季節以外にもここにいられるように、ベアになって来てくれたカエルくん。
わずかに残った力を振り絞るようにして、彼の願いを叶えてくれたユリちゃん。
おかげでぼくは、’ぼくのままでいい’ と、再び思うようになれたんだ。
 
 
 
 
空と海と太陽のそばで漂う雲。それが、ぼく。
 

 
 ひーん・・
 「重いよぅ~。」
 「がんばるのだ。」

 
 
あるときは形を変え、またあるときは気配を薄めたり、濃くしたりしながら 寄り添い、
全てをただそのまま感じて、見つめ続ける。
それがぼくの、愛しかた。
 
やがてくる 大きな変化のすべてを、ぼくは受け止めていく。
 
 
 
 
 
緑が深くなってきた。 もう、近くまで来ているのだろう。
 

 
 
 
ねぇ、カエルくん。
6月の美しい雨は、たくさんの宝物を連れてきてくれるんだよね。
 
ぼくは今年も、はりきって探すよ・・。
 
 

 
 
 
 
*前回のお話は、こちらです。
*次回のお話は、こちらです。
*『ポラリスの物語』は、こちらです。
 
 
 
 
***  ***  ***
 
 
*刺繍をしました*
 

 
 
 
 「久しぶりの
   お仕事です☆」

45×33センチ。大きくてたっぷり入りそうです。
 
 
今週は、ベアのご紹介がお休みでしたので、
編み物講座が終わってから、かぎ針編みの花モチーフを刺繍してみました。
バッグは、丈夫なブラックの帆布製です。
数年前にイベントでいただいてからずっと、
モチーフでデコレーションしたい・・* と思っていたので、
ようやく実現できて嬉しいです。
 
「ファーリッシュ」「アスティファー」「ビッグボール」「モールレジーナ」など、
ベアたちの毛糸を中心に使い、細編み、長編み、鎖編みを組み合わせて作りました。
花を、肩掛けしたときに腕やひじが当たらない高さにしています。
内布用の生地は、迷いに迷って今朝決めて注文しました。
ポケットやスナップをつけて、使い勝手の良いものにしたいです。
 
 
編み物は 本当に楽しいです・・*
幸せは、編むこと。
梅雨の間も、時間を見つけて、色々なものを作ってみたいと思います。
 
 
 
 
 

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