私は、パラレルワールドに ’行けない’子供でした。
親や先生の期待に背いたら、社会できちんと生きていく大人になれないと、
幼い頃からずっと、信じていたからです。
周囲の大人に喜んでもらうためには、努力と我慢の積み重ねが重要で、
今いるところでさえ、日々をいっぱいいっぱいの思いで生きているのに、
別の世界に渡ってまた 一から積み上げるなんて、考えるだけで足がすくみました。
「期待に応えなくても良い世界」のことなど、
想像することさえ できませんでした。
だからシュンには、人生の主導権がその手の中にあることを、教えたかったのです。
高さ、よし^^。
「今年のスヌード、完成!」
この世界にやってきた 初めのうちは、ただ安堵していました。
慣れてくると、編み続けられる喜びが じわじわとこみ上げてきました。
そして、自分の作ったベアたちが 動いておしゃべりするという
子供のころの憧れが実現したことも嬉しくて、夢中になって編んできました。
でも この先は・・・。
答えが出せないまま、考え続けています。
あっ、いたいた!
「カズキ~*」
「おかえり、レオ。」
じゃーん!
「来てくれました~☆」
「ただいま。」
「・・・・!!」
彼は、Lupo のベア。
昨年の私の誕生日に 来てくれたベアです。
その腕に、おひさまの光を集める力を持つルーポは、
その力でコンちゃんと私たちを助けてくれたのですが、
深い森ではない我が家にいると、どうしても光を集め過ぎて
あたりを厳しい暑さにしてしまい、
また、彼自身もそのことで心身ともに参ってしまって、
夏の終わりに、ポラリスの湖のそばのふるさとへ 戻って行ったのです。
まさか、こんなに早く再会できるなんて・・。
「瞳を この、雲のひとと同じものに替えてくれるかな?
そうしたら、ぼくはここにいられるんだ。」
「わかったわ。」
再会できるなんて・・。
「よろしくね。」
「まかせて。」
- ・・ねぇ カズキ、 ぼくは、
雲のひとと 空と海のひと、そして、今回の太陽のひとのことをずっと見ていて、知ったんだ。
「悲しみ」と「怒り」は同じもので、その背中には「愛情」がぴったりと張り付いていることを。
そう、表と裏なんだ、これも。都合よくコントロールすることは難しいんだ。
「強すぎるかな・・?」
「大丈夫。
片目だと そう見えるのよ。」
だから、互いに、ありのままの相手と自分を大切に思うほどに、
「悲しみ」や「怒り」の種である「違和感」のようなものが生まれやすくなるのは、
きっと、自然なことなんだね。
大切なのは、どうやって「違和感」を受け入れ、向き合うかということ。
ぼくはもう一度、カズキとみんなと、話したいと思ったんだ・・。
「ありがとう・・!」
-・・本当に そうね。その通りだと思う。
生きていくことは、世界にたったひとりで立ち向かうことでありながら、
心が真に求めるものは、他者との深い関係性なしには 見い出し得ない。
どう向き合えば良いのか、私もずっと、考え続けているんだ・・。
帰ってきてくれて、ありがとう。
私も、ルーポと みんなと、話したいです。
*『さよなら ルーポ (P☆snapshots 144)』はこちら、
『さよなら、ルーポ。』はこちらです。
*これまでのお話『ポラリスの物語』は、こちらです。
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思い出した・・。
ルーポは、ぼくが、 ’コンちゃんのために’ 作ったヒトだ。
「ぼく ・・・行かなくちゃ。」