光る風 3 (P☆snapshots 180)

 
 
この毛糸の家の世界ができて、ポラリスを飛び出してから、
そろそろ 4年が経つんだね・・。
ぼくにとっては、本当に長くて苦しい、不安定な時間だった。
 
・・といっても、まだまだ全然安定していないことは、
ぼくのこの話自体が コンちゃんに比べて全然まとまっていないとこからも、
バレちゃってると思うんだけどさ。
 
しかし、ポラリスにいた頃のぼくだったら こんなこと、
こんな・・弱音を吐くような話なんて、絶対にしなかった。
さんざん揺さぶられたおかげで、変わってきたのかもしれないなぁ・・。
 
 

 
 
 
あのね、
レオは、珈琲が飲めるようになりたいって チャレンジを続けているよね。
 
実は1回目のことを聞いたとき、ぼくは、
みんなが大真面目にレオを応援していることが信じられなかった。
確かに、レオには少しエキセントリックなところがあって、
ここではさらに暴走気味だったけど、
なぜカイトが焚き付け、みんなが煽るのだろうと、疑問しか湧かなかった。
 
だけど、2年経って レオが再びチャレンジすると言ったとき
ぼくはそこで初めて、彼が無意識のうちに
記憶をふさぐ痛みに向き合っていることに、気がついた。
 
シュンの学校や友だちのこと、ベアたちそれぞれのポラリスでのこと、
みんなの話を、さまざまな思いを聞いているうちに
なにげないような日常を重ねていく意味を知ったからだと思う。
 
レオは、投げ出したわけじゃなくて、
自分のことも、世界のことも、心にすっと落ちる本当の理解を求めたのだと、
そのとき初めてぼくは、ひとの心が見えたような気がした。
 
 

 
あの日、ぼくも、はじけて粉々になりながら、この世界に落ちてきたのかもしれない。
そして、みんなと暮らしてきた日々は、そこから必要なかけらを探して
拾い集めるようなものだったのかもしれない・・。
 
 
 
聞いてくれてありがとう。
考えてみたら、ぼくは今まで、自分の気持ちを語ろうと思ったことなんてなかった。
まとまっていなくても、重苦しいものでも、外に出すと心が軽くなるんだね。
おかげですっきりしたよ。
 
まだ他に、’役割’のこととか、これからのこととか
みんなに話して、聞いてみたい気がする。
 
いろいろ話そう。よろしくね。
 
 

うん・・*
 
 
 
 
 
*前回のお話はこちらです。
*次回のお話はこちらです。
 
 
 
 
 
 

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