ナイロンの思い出
もう10年以上も前のことですが
私は化学繊維メーカーに勤めていました。
主にポリエステル、ナイロン、アクリルの糸を生産し、
それを糸のまま、または生地や製品にして販売する会社です。
私はそこで、ニット生地の企画・販売に携わっていました。
その部署に配属される前、新人の頃に、
1年とちょっとの間、工場勤務をしました。
そこは、ナイロン糸の製造工場でした。
たしか、私が産まれる20年以上前から生産を続けている工場で
とっても古いのですが、日本でしか生産できないような難しい、
でも繊細で美しい糸を作っていました。
主に高級ランジェリーやストッキングに使われる糸です。
化学繊維そのものは、水を吸いませんが
(糸の隙間に吸い込ませる工夫を施したものはあります。)
ナイロンには、糸に若干の吸放湿性があり、
また、綿などの天然繊維よりも丈夫で発色が美しいため、
よく使われるのです。
当時は、中国が世界の工場として躍進し、
その脅威と恩恵のはざまで世界中が大きく揺れていた時期で
この工場も、変革の波に揉まれながら、
自信と誇りを、と励ましあって糸を生産し続けていました。
ナイロンは、3階建ての建物を使って作られていました。
まず3階で、原料のナイロンチップを溶かします。
巨大な釜で、です。
これはペレットなのですが、原料はまさにこんな感じです^^。
それを、いわゆるじょうごから、
たくさん穴の開いた口金を通って2階へ落とします。
それを2階で引っ張って、細く細く伸ばし、
1階でも更に細く伸ばして、巨大なボビンに巻き取ります。
こちら はポリエステルの工程を 説明したものですが、
ナイロンも同じようなイメージです。
*ちょっとマニアックですが「化学せんいe-book」もおすすめです*
私はこの工場で、生産管理のアシスタントをしていて、
毎日工場内を回っていました。
何百人もの人たちが、今よりもっと生産性を上げよう、
良い糸を作ろう、と努力されていました。
上司の製造部長は、コンマ数パーセントの
収率(原料から製品になる率)を上げようと、
何時間も引き伸ばしのマシンから離れないような人でした。
糸を巻き取るゴーっという轟音の中、
古い機械の間を、次々と流れてくる
美しいナイロンフィラメントを見ながら、
いつか、この糸を売って歩くんだ・・* と何度も思ったものです。
そして、〇年前の今日、6月1日、
工場勤務を終えた私が受け取った辞令は、
「ポリエステル糸」主体のニット生地の
企画・販売部署へ、というものでした。 あらら・・。
今はどこも即戦力と言われていますが、
当時は、おおらかといいますか、
幅広く繊維のことを知ってほしい、という会社の方針があって、
このあとも、様々な分野を勉強させてもらいました。
しんどいことも、楽しいこともたくさん。
今でも忘れられない、大切な思い出です。
*「工場の一日」(2012.7.20)はこちらです*
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あのー、カズキさん。
「あそこの、筋トレ中のヒトたちが、
ワタシのこと、モリゾーって呼ぶんですけど・・・^^;」
早く仕上げていただけると ありがたいですねぇ・・。
- わかりました~^^;☆
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「人生って、しんどいよね・・」
「だな。・・・おっ、ヒツジ雲だ!」
「・・ほんとだ。かわいい・・*」